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第3回しずおかジュニア翻訳コンクール 審査委員講評

【全般的講評】
和訳部門は全体的にかなりレベルの高い作品が多かったが、英訳部門は課題が少し難しかったためか作品のレベルが低かった。
段落構成や句読点に対する配慮が行き届いていない作品が目立った。
両部門とも、優れた作品は課題文の内容をよく読み、分析しているのがうかがえる。
両部門ともに辞書をもっと利用してほしい。



【英訳部門について】
日本語の特徴のひとつとして主語を省くことがあげられる。今回の課題文も、主語を誰にするかで、英文がまったく別の内容になる。その点に注意して英訳を進めてもらいたかった。
英訳のポイントは、ナチュラル・イングリッシュでどの程度まで文章を書けるかということなので、そのために単語の語法、用法などを辞書で徹底的に調べて、英文を書いてほしい。
課題文とは異なる段落構成の英文を書いている作品がかなりあった。しかし、内容的に効果的な英文になっている場合はほとんどなく、原文に忠実な段落構成を勧めたい。
自然な英語を書くのは、なかなか難しいものです。まずは、日本語の意味をよく把握して、著者の意図を理解することが大事です。そして文法は当然のこと、それぞれの単語のニュアンスも留意しながら文章を確立しましょう。
まず、日本語のややこしいところは、英語にうつしやすい日本語に書き換えてみることじゃないでしょうか。今度はそれを、自分の知っている英語におきかえていく。和英辞典を引いたら、自分の知っている、できるだけやさしい英語を使うこと。もし知らないことばを使わざるをえないときは、一度英和辞典で調べてみることだと思います。そして、できあがった文を日をおいて、少なくとも三回は見直してみることです。まずスペルミスはないか、冠詞は、時制は、と重点をおいて見直すことだろうと思います。つまらぬスペルミスが結構見られたので。
ストラスブールの少女という、とてもロマンチックなタイトルの作品ですが、文章としてはかなり訳しにくいものだったのではないでしょうか。その理由として、マルまでの一文が長く主語がはっきりしていない箇所が多いことが、あげられると思います。
こうした文を英訳するときには、まず思考形態そのものを英語の流れに切替え、「主語」「動詞」や「時制」を明確に意識しつつ訳していくことが大切でしょう。その際、一つ一つの単語を辞書を頼りに日本語から英語に置き換える作業に終始するのではなく、日本語のわからぬ読者を念頭に置いて、内容を伝える努力を常にすべきでしょう。この難解な作業に若い皆さんが果敢に挑戦し、応募者数が大幅に伸びたことは、審査委員として大変うれしいことです。

【和訳部門について】
まず皆さんの文章のうまさ、その勢い、リズムに心を打たれました。スーザン・ヒントンが『アウトサイダーズ』を書いた頃というのは、こんなではなかったかと若さの持つまっすぐな力を心底すばらしいと思いました。これが一読しての率直な感想です。
 さて、二読め、三読めと読ませていただくうちに少々気になるところが見えはじめました。時制とか定冠詞、不定冠詞のことを言い出しますと、(また文法なんか言い出して)とお思いになるかもしれませんが、こうしたものは非常に大切です。課題文前半の ”That was my meaning.”の be動詞の時制には気をつけなくてはいけませんし、”corpse” になぜ “the” がついているかはちゃんと立ち止まって考えなくてはなりません。
 翻訳するときいちばん注意すべき大切なことは、自分の読みを押しださないこと。できるかぎり自分を無にしてひたすら書き手の声に耳を傾けることです。私が、私が…と出ていくとたちまち、私たちは、書き手が細心の注意を払って書いた文章のそこここを見落とし、一見小さなささいなことと見えるものにこめられた書き手の思いを、論理を、思考の道筋を見逃してしまいます。
 自分を無にすることはとてもむずかしいことではありますが、いえ厳密にいえば不可能とも思いますが、まずは静かに耳を澄ますこと。これが何より肝要かと思われます。
”Read between the lines” という表現があります。日本流に言えば「行間を読む」。文字に表されていない背後の雰囲気や気持ちまでも、しっかりと捕らえて作品を味わうことの大切さを伝えた表現だと思いますが、今回の課題作品は特に会話部分において、「行間を読む」ことができたかどうかで勝負が決まったような気がします。
 共同墓地完成の式典にむけ、「死体」の出現を心待ちにするような言動につい及んでしまう父親。その父親に、やんわりとことばの牽制球を投げる母親。二人の間の微妙な心理の葛藤を、いかに的確かつ簡潔な日本語で表すかが、腕の見せ所となったわけです。
 入賞作品は、この点においてよく工夫されたものが多く、レベルの高さ、層の厚さを感じました。
今はなき翻訳の大家、飛田茂雄先生は「翻訳は黒子だ。」といいました。いい訳をしてやろうと思い、原文にないことをつけ加えたりすることは、控えるべきだろうと思います。あくまでも、いかにしたら原文が生きるか、作者の気持ちを出せるか、に気をつけるべきではないでしょうか。この「過剰訳」で減点になった人が何人かいました。訳者は自分の気持を抑えに抑えることではないのか。それでもうっすらとあらわれてくるものがある。それがその訳者の「味」といえるのではないか。が、はじめは、そんな味を出そうなどと思わず、形容詞、名詞、動詞などを無視することなく、いや冠詞やコンマひとつにさえ気を配って、原作者の意図を汲みとるように努めるべきではないかと思いました。その原点は、まず、文法的ミスを犯さないことだろうと思います。
翻訳する場合、登場人物の社会的・地域的背景や、人間関係に対してどこまで踏み込んで理解できるかが重要である。
今回の課題文は、会話の部分をいかに訳すかがポイントだった。したがって、会話の部分が、どのような語彙を用いて訳したらより生き生きしたものになるか意識して、翻訳に取り組んでほしい。

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